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【THE対談】「鈴木Daichi秀行×松隈ケンタ」1/4

【THE対談#002】

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音楽クリエイターとしてJ-POPシーンを牽引し続け、日本にいる限り手がけた音が耳に入らないのが難しいほど多くの人気作品を生み出している「鈴木Daichi秀行」氏と新気鋭のクリエイター集団SCRAMBLES代表である「松隈ケンタ」の直接対談!

音楽シーンの第一線を行く2人が語る、制作秘話や音楽シーンへの熱い想いから見える、時代を生き抜く“クリエイターの形”とは!?

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第1回【出会い編】

お2人は実際に会われるのは初めてなんですか?

松隈:そうなんですよ。はじめまして!

鈴木:もともとSNSでは繋がってて。そこでモンハンやってるっていうからゲームの世界で一緒に狩りをしてたんだけどね。

松隈:Daichiさんめちゃくちゃ強いんですよ。笑 仕事では、柴咲コウさんのラバソーを書かせてもらった時に、Daichiさんにアレンジをやってもらったのが最初でしたね。その時は作曲家とアレンジャーの関係だったから会うことはなかったんですけど、その時からネットでは繋がりを持たせてもらって。でも同業者同士って、なかなか会う機会がないからネット上で会話させてもらったりしてたんですよね。

 他のアレンジャーさんでもそういうことが多いんですか?

鈴木:そうだね。飲み屋さんで会うぐらい。笑 

松隈:現場では会わないですよね。

鈴木:プレイヤーの人だったらあるけどね。

松隈:そーですよね。プレイヤーさんからはよく言われるんですよ、Daichiさんと知り合いじゃないって意外って。笑

鈴木:今だと外のスタジオもそんなに行かないからね。昔だと隣のスタジオで会うとかあったけど。

松隈:お会いしたいから今回対談をお願いしたみたいなところもあるんです。笑

鈴木:なかなかタイミングがないからね、ほんとに。

松隈:まあ、ただモンハンにハマってた時期は毎晩一緒でしたけどね。笑

今はやられてないんですか?

鈴木:今はほとんど。一瞬ばーって燃えて、しゅーって冷めるっていう。

ということは音楽の話をされるのは初?

松隈:そうです。笑 

鈴木:ゲームの話しか、したことなかった。笑

おもしろいですね!今ドキの関係というか。

松隈:中川翔子さん関連でもお互い仕事してたりで、距離は近い感じはしてましたけどね。

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中学生のときシーケンサーとシンセを買って楽しんでた。笑

先ほど少しお話に出ましたが、最近は外のスタジオを使わず、ご自身のスタジオで作業されることが多いんですか?

鈴木:昔だと外じゃないとできなかったことが多かったからね。Protoolsもなかったから、ヨンパチってレコーダーに取り込むのにアウトボードとか全部機材持って行って。うまく同期しないことがよくあって大変だった。笑

アレンジャーの仕事は何年前からやられてるんですか?

鈴木:16.7年ぐらいかな。当時としては始めたのが早くて23歳ぐらいから。20歳のときにバンドでデビューして。でもアルバム1枚だしたあたりでやめちゃった。それでその時知り合ったアレンジャーの人に声かけてもらって始めたのがきっかけかな。

バンドではギタリストだったんですか?

鈴木:うん。でも一番最初に始めた楽器はキーボードでTM NETWORKが好きで打ち込みから入ったんだよね。それが中学生のとき。ギターは高校入ってから始めて、バンドで原宿の歩行者天国とかでやってた。割と普通のバンドマンだよね。笑

鍵盤とギターでマルチなイメージですけど、始まりは鍵盤でバンドではギタリストだったんですね。

鈴木:鍵盤というか打ち込みからだね。ピアノを習ったこともないし。小さい時からパソコンとかが好きで、その延長で始めたって感じかな。音楽の始め方としてはちょっと特殊で、楽器からというよりは機械からなんだよね。今は割と当たり前になってるけど。それこそ初音ミクとかね。

20年近く前から今風のことをやってらっしゃったんですね。笑 当時から機材は好きだったんですか?

鈴木:うん。中学生のときシーケンサーとシンセを買って楽しんでた。笑

松隈:中学生でシーケンサーって。笑 すごいですよ!ギターを始めたきっかけって何なんですか? 

鈴木:ギターは不純な動機で、学校までが遠くて軽い楽器が良かったから。笑 キーボードは重くて。

なるほど。笑 憧れのギタリストがいて~っていう典型的な形ではなかったんですね。

鈴木:うん。笑 でもボウイは好きだったし、ジュンスカ世代だったからコピバンとかしてたかな。

バンドマン街道の王道を行ってたんですね。お話を聞く限りだとROCK好きの印象ですが、ほかのジャンルを聴きだしたのはいつ頃だったんですか?

 鈴木:本格的にはアレンジの仕事を始めてからだね。その前からペットショップボーイズとか打込系は好きだったけど。だからDance系とかはあんまり知らなかったかな

 松隈:でも仕事始められてからはけっこう聴かれたんでしょ?勉強というか。

 鈴木:そうだね。というかやらざるを得なくなった。だって知らないんだもん。ちょっとラテンにしたいんだけどさ!とか言われても聴いたことないし、どうしようって。そうなったら聴くしかないでしょ。笑

 意外ですね!てっきり広いバックグラウンドがあるものだと思ってました。なんか少し安心しました。笑

 鈴木:23ぐらいのときにも本格的なR&Bをやることになったけど、知らなくて。焦って聴きあさったよ。でも結果的にできたものは面白がってもらえて。元々、アレンジャーの前にマニュピレーターをやってたことがあったからその時の経験が生きてるのかもね。アレンジャーの求める音に対して、それに答える音を出すことをやってたから。だから、素材があって、それに何か取り入れることとか、出したい音に対してどうやったらその音が出せるか、みたいなのは得意ではあるかな。

ダサいとカッコいいってすごく近いところにいるんだよね。

理論的な勉強とかはされてたんですか?

 鈴木:学校に行ってとかはないよ。音大とか専門に行ったこともないし。

独学でやってこられたんですね。独学というところで他に大変だったことはありますか?

 鈴木:弦もののときかな。ストリングスアレンジをやって、それを録らなきゃいけなかったんだけど、よくわかんなかった。笑 とりあえず、自分でいいと思えるものを打込でつくって譜面出してみたけど、弾けんのかなこれ?みたいな。

 松隈さんからしたDaichiさんのイメージはどうだったんですか?

松隈:バンドやられてたのは知ってたから、バンド系の人なんだろうなとは思ってました。アレンジャーって大きく2種類のタイプがいると思うんですよね。Daichiさんとか俺もそうだけど、バンド出身で独学でやってきてるタイプと、音大とか音楽学校出て理論とか楽典をきっちりやってきてるタイプ。どちらかというと、前者のほうが気が合う人が多い。笑 

鈴木:感覚派と理論派って感じね。

松隈:やっぱ音とか曲に出てきますよね。聴いたらどっち派なのか検討つくというか。音楽的にどっちがいい、ってことじゃなくね。

鈴木:俺の場合、仕事始めるのが早かったから腹くくるしかなくて。その時一線でやってた人たちって年でいうと一回り上とかそれ以上で絶対的に経験値が違う中で、仕事をもらうには、自分なりの何かというか自分にしかないものを持たないといけなかった。そうなったらもう、一から勉強するってことよりも、知らないけどとにかくやってみるって姿勢でいたよね。一つ武器かなって思ってたのは、理論派の人たちが絶対やらないようなこと、知識があると恥ずかしくて無理しないとやれないようなことが、自分は抵抗無くできるってことかな。それに対して更に新しいものを入れてみたりしたら、面白がってもらえたんだよね。

松隈:僕もBISで、アイドルが普通だったら入れない2バスとか速弾きを入れまくってた。笑 人がやらないことをやる、ってことですかね。

鈴木:だれもやってないようなところに行くってすごく大事で、さらに言うとそこでダサくならないギリギリのラインを見極めることが必要なんだと思う。そこのラインって確実に存在してて、ダサいとカッコいいってすごく近いところにいるんだよね。

 「何か」を持たないと聴いてもらえない

 なるほど!そのあたりのことを踏まえて最近の音楽に対して思うことはありますか?

 鈴木:遊び心を持ったものが減ったかな。最近の風潮って、うまくカッコいいところに納めようというか、上手にやろうとしてるのを感じるものが多い。80~90年代とかって、作家もアーティストも今と比べると、はちめちゃだったなって思うけど、だから面白かったのかなって思う。今やったら、それどうなの?って思われることも、みんなどんどんやってたし。

 松隈:そうですよね。過激!って感じる人が少なくなりましたもん。火吹く人とかおらんもんね。笑 枠にはまってる人が多い気はしますよね

 鈴木:音楽がカテゴライズされてきてる中で、作家もそこに向けてつくるようになってくると尚更ね。でも結局はそこからはみ出したものが世に出ていくんだと思うんだよね。松隈くんの音楽もそうだけど。変わったことをするのって怖いからなかなか踏み出せないところはあるんだけど、それを遊び心として捉えられるかが大事なんだと思う。

 松隈:僕は完全に遊んでますね。笑

 鈴木:音楽ってそういう部分の伝達が強いから、楽しくやってるのってそれが音に出て聴く人にも伝わっていくんだよね。

 松隈:仕事は仕事としてきっちりやらなきゃいけない、って前提はあるけど、遊びを入れていったもののほうが面白がってもらえるのは感じますね。世の中捨てたもんじゃないなって思う。笑 そこが伝わらなかったらミュージシャンとしては複雑よね。やさぐれてしまうかも。なんだよ、伝わらないのか!みたいな。でも今ってネットやSNSとか個人でも発信する手段が増えたから、そういう点ではいい時代なのかもね。個人の個性が伝わりやすいから。

 鈴木:まあやったもん勝ちみたいなとこもあるしね!インパクトってすごく必要で、それがないと覚えてもらえないから。そういう意味で、自分のやってることを知ってもらう、って大事だなって思う。自分でもコンプレックスがあって、さっき話してた理論派とは違うところからスタートしてるから、それに対して対抗できる「何か」を持たないと聴いてもらえない!って考えちゃうんだよね。意図的な、はったりみたいなことも必要なんだと思う。

アピールというと音以外では名前もあるかと思いますが、鈴木Daichi秀行さんの、Daichiはあだ名で呼ばれてたんですか?

鈴木:そうそう。高校の時に。当時話題になった水泳選手がいて、その人が鈴木大地さんっていうんだけどそこから。笑 

松隈:バサロ!

鈴木:確か背泳ぎで。ちょうどその時に高校入って、その時のバンドメンバーにあだ名つけられて、そのまま今に至ってる。笑

松隈:僕ら世代からすると、元ネタ絶対そうだろうな、とは思ってましたけど、やっと確かめられました。

鈴木:超有名人だよね。笑 

謎が一つ解けたということですね。笑

松隈:でもこういうインパクトって必要ですよね。

鈴木:うん。狙いがあったわけじゃないけど、結果的にこのネームで良かった。クレジットに載るときとかに、何だこの長い名前?って思われて覚えてもらえるっていう。笑

松隈:僕も名前をカタカナにしてますけど、(作家さんで)名前変えてから仕事増えた!みたいなこともよく聞きますしね。

鈴木:なんでもそうだけど、記憶にとどめてもらうって結構大事なことなんだよね。

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第2回【機材編】につづく

 

鈴木Daichi秀行

埼玉県出身。作編曲家プロデューサー

バンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かして活動中。自身の活動拠点「StudioCubic」から時代に合わせたより明確なサウンドを表現し続けている。

YUI / 絢香 / miwa / ダイスケ / LiSA / 家入レオ / AAA / 広瀬香美 / いきものがかり / 平井堅 / mihimaruGT / ゆず / JUN SKY WALKER(S)  K.   SMAP  少年隊  News  山下智久  SexyZone  HEY SAY JUMP モーニング娘。 松浦亜弥  ℃-ute  Berryz工房 SUPER☆GiRLS  AKB48  ももいろクローバーZ 平野綾 etc.

松隈ケンタ 

福岡県出身。作編曲家プロデューサー

ロックバンドBuzz72+を率いて上京、2005年avextraxよりデビュー。CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表。

バンドの休止後に作家として楽曲提供を始める。2011年、音楽クリエイターチーム「SCRAMBLES」を結成。

柴咲コウ/中川翔子/BiSサウンドプロデュース etc.

THE対談#002「鈴木Daichi秀行 × 松隈ケンタ」1/4

編集 ・インタビュー/平シンジ 

編集長コラム「平シンジの音バカ」はこちらから!

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