クリラボ

【THE対談】「CHOKKAKU × 松隈ケンタ」2/3

【THE対談#001】

DSC_0290

誰もが知るヒット曲の数々を手がけるアレンジャー界の”重鎮”CHOKKAKU氏と、彼に見いだされプロデビューした新気鋭のクリエイター 松隈ケンタ(BiS etc…)による師弟対談がついに実現!! 25年ものキャリアを誇るCHOKKAKU氏の音楽に対する想いから、サウンドメイクの方法、他では聴けない裏話まで、2人の関係だからこそ話せる本音でたっぷりと語って頂きました。全世代の音楽人必見です!! DSC_0269 (2)  

第2回【音楽制作編】

次は音楽制作に関して伺いたいと思います。近年、DTMの普及で制作のデジタル化が進んでいますが、お二人はどんな機材を使って制作をされているのでしょうか?またその理由もお聞かせいただけますか?

CHOKKAKU最近はほぼデジタルでやってるね。昔はアナログ機材通してやってたけど、あんまり効果ないなって。というかデジタル技術の進歩が素晴らしすぎて、デジタルの中でやったほうが全然音がいいなって思う。アナログ伝説はかなぐり捨てたというか。笑

松隈意外ですね。CHOKKAKUさんぐらいの年代の方だと、アナログ派の方も多い印象ですけど。

CHOKKAKUたぶん、そういう人達は良いデジタルの音を聴いてないんだと思う。伝説に惑わされてるというか。確かにProtoolsも出始めの頃はそんなに音良くないなって思ってたけど、それでも作業効率ではメリットがあったし、今では音に関しても昔と比べ物にならないくらい良くなってるからね。もし60年代とかのミュージシャンが現代にいたら、真っ先にデジタル機材を使ってると思う。音楽を作るツールとしてアナログより優れてるから。もう少し詳しく言うと、クリエイターが制作に使う道具として重視する点って「音の善し悪し」というよりは、「浮かんだアイデアをいかに一瞬にして具現化できるか」ってところだと思う。例えば、ギターにエフェクトをかけるにしても、いちいちシールドつけかえて〜ってやってたら、せっかく浮かんだアイデアが消えてしまう可能性があるし。

松隈アイデアが浮かんだら、すぐアウトプットしたいですもんね。音をメモるというか、とにかく試したい。

CHOKKAKUそうだね。デジタルってそういうスピード感っていう点ですごく優れてるし、更に言うと前にも戻れるから、聴き比べが簡単にできるのも大きいよね。前のほうがよかったじゃん、こっちにしよう、って判断がしやすい。ただ、アナログがダメってわけでは無くて、音質とか音的なことでは、アドバンテージがあるところもあって。難しいところだけど、アイデアを形にする音楽的な部分ではデジタルが長けてるってことかな。

松隈そうですよね。けど音色的なところで言えば、ギターのプラグインだけはやっぱりまだ本物に勝てないですね。

CHOKKAKUもうちょっと時間がかかるだろうね。デジタルだと倍音の表現が難しいから。でも、確実に技術進歩はしていて、テープシュミレーターとかは本物使うより良かったりするようになってきてるから、ギターもそう遠くないうちに本物がかなわないようなすごいのが出てくる気はしてるけどね。いつか。

 

 DSC_0296  

■CHOKKAKU氏保有のエフェクターの数々■

ギタリストでもあるCHOKKAKU氏、使い込まれたペダルの数々がミュージシャンとしての歴史を感じさせられた。        

 

 

 

 

技術進歩でいうと、マスタリングの工程も変化が起きてきていると思うのですが、お二人が実制作に関わる中で何か感じるところはありますか?

CHOKKAKU今ってマスタリングすら自宅でやっちゃう時代になってきてるよね。デモでもフルビット状態みたいな。

松隈波形がノリとか昆布って呼ばれるやつですね。笑 あるマスタリングエンジニアから聴いた笑い話ですけど、最近はもはやTDデータから音を下げるのが仕事だって言ってましたよ。

CHOKKAKUたぶんね、マスタリングって必要なくなってきてるんじゃないかな。 マスタリングって元々アナログレコード時代に、音量差が大きすぎるとレコードの溝がうまく彫れなくて音にならないってことがあって、それを防ぐ為にリミッターとかを駆使してマスタリングすることで音量差を少なくして、一定の深さの溝が彫れるようしたのが始まりなんで。その意味では、デジタルには必要なかったんだよね。でももちろん、デジタルでも目的はあって、アルバム内の音量を一定に抑えようっていうやり方、その後にくる目的として、いかに音を両脇に広げるか、フルビットにするかっていうところとか。それをついこの間まで、エンジニアがハードの機材でやってたんだけど、そのハードを追い越すようなプラグインが今はもう1万円ちょっとで買えちゃうようになってきて。笑 もはやマスタリングエンジニアっているのか?って感じるときもあるよね。

松隈自分で出来る範囲がすごく広がってますからね。DTM世代の若いミュージシャンにはわからないかもしれないですね、マスタリングの必要性。

CHOKKAKUあれ?なんでしょぼくなってるんだ、みたいな。笑

松隈もとより迫力ないぞ!?って。笑 そう考えると今後は更に、デジタルを巧く使えるクリエイターの活躍が増えてくるんでしょうね。

デジタル化が進むことで技術的にはプロとアマの境が狭まってきているということですね。では、少し技術から離れて音楽的なことを伺いたいと思います。これは気になる方も多いと思いますが、楽曲のアレンジをする際、まず何から始めるんでしょうか?

DSC_0284

CHOKKAKUまずは、頭の中でかっこいいって思える出来上がりのイメージを作ることかな。想像できないものは作れないから。

松隈方向性が決まったらまずはコードを決める感じですか?  

CHOKKAKUそうだね。リハーモナイズから。最初に一番カッコいい進行を考えるね。 基本ポップスだと同じ進行をループしたほうがカッコいいと思ってるから、なるべく繰り返せるようにするかな。

松隈イントロ、Aメロは同じみたいな。

CHOKKAKU同じ進行にすることもあるし、一部分だけ変えてちょっと違う雰囲気をだすとか、進行は変えずに楽器の種類を変えてっていうのもあるね。

松隈基本ギターでやってます?

CHOKKAKU曲によりだね。バラードはピアノじゃないと雰囲気でないし、EDMだったらメインで使うシンセを決めて、そこから膨らませていくのが多い。

松隈リズムはいつごろ決めるんですか?

CHOKKAKU大体リハーモナイズしてる間に頭の中で鳴ってきて、おのずと固まってくる感じだね。

メロを含めたハーモニーから構築していくんですね。コード感の他に気をつけるところは何かありますか?

CHOKKAKU楽器をコンパクトにすることだね。音色の登場人物を最小限にして、全ての音が聞こえることが大事かな。DTMってどんどん音を増やせるから詰め込みがちになるんだけど、やり過ぎると団子状態になって、もはや初めに入れてた音が聴こえないなんてこともあり得るので。特にcubaseとかだと、いくら音を入れてもクリップしない仕組みになってるから、使ってる人は気をつけた方がいいと思うよ。

複雑になりがちなところを意識的に抑えているんですね。デジタルの功罪というところでしょうか。アレンジに関して続けますが、アレンジの際は曲のどの部分から作っていきますか?

CHOKKAKUイントロからが多いかな。そこからAメロを作って。そこまでいけば全体のイメージが出来るのであとは他を合わせていく流

れ。サビからつくることもあるけどね。

松隈僕はサビの終盤から考えるんですよね。一番派手なところからつくって、そこから引き算していきますね。最大値を決めて減らしていく。

CHOKKAKU片付けてから作業するか、作業しながら片付けて行くかみたいな。笑

ここでも引き算の考え方が大事だと。いずれにせよ、いかに音を少なくして洗練された状態にするかってことですね。

クリラボ CHOKKAKU×松隈ケンタ

 

 

 

 

 

第3回【プロになるには?編】はこちら  

CHOKKAKU 

広島県出身。 FLEXでバンドエクスプロージョン世界大会に出場 解散後は主にアレンジャー、プロデューサーとして活動。 SMAP/KinkiKids/JUJU等、手がけたヒット曲は多数。日本有数のクリエイター。

 松隈ケンタ

福岡県出身。 ロックバンドBuzz72+を率いて上京、2005年avextraxよりデビュー。CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表。 バンドの休止後に作家として楽曲提供を始める。2011年、音楽クリエイターチーム「SCRAMBLES」を結成。 柴咲コウ/中川翔子/BiSサウンドプロデュース等

THE対談#001「CHOKKAKU × 松隈ケンタ」

編集 /平シンジ インタビュー/ Schtein&Longer

編集長コラム「平シンジの音バカ」はこちらから!

URL :
TRACKBACK URL :
Return Top