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【THE対談】「鈴木Daichi秀行×松隈ケンタ」 3/4

【THE対談#002】

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音楽クリエイターとしてJ-POPシーンを牽引し続け、日本にいる限り手がけた音が耳に入らないのが難しいほど多くの人気作品を生み出している「鈴木Daichi秀行」氏と新気鋭のクリエイター集団SCRAMBLES代表である「松隈ケンタ」の直接対談!

音楽シーンの第一線を行く2人が語る、制作秘話や音楽シーンへの熱い想いから見える、時代を生き抜く“クリエイターの形”とは!?

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第3回【アレンジ編】

ちょっとテーマを変えて、アレンジの作業についてお聞かせください。アレンジャーとして様々な案件やってらっしゃると思いますが、その中でアレンジをする際に何を重視するかとか、アレンジをするときにまず考えることとか、外しちゃいけないポイントなど、思いつくものをお伺いできますか?

鈴木:僕が頼まれるのは、割となんかこう、正統派といえば正統派だけど。なんか、どっちかというと、ちょっと歌謡曲っぽいというか…。

松隈:ポップス。

鈴木:うん、ポップスの、なんかど真ん中の感じが多いから。割と、なんかよくわかんない、こう漠然とした、売れそうな感じっていうか。笑そんなものないんだけど。笑 やっぱ歌ものだから、まぁ歌を聞かせるっていうのが一番大きいかもしれない。まぁ、当然なんか変なものを望まれて変なものをつくることもあるけど。基本的には割とわかりやすいものっていうか。

サビの一番最後の…エンディング?からやることが多い

松隈:制作に取りかかる前に何か参考曲って、うかべますか。

鈴木:いや、うかべない。

松隈:あ、うかべない。

鈴木:割と、やってみて、みたいな。

松隈:へぇ!!面白いですね。作業的には何からつくるんですか。イントロとか、サビとか、コードとか。

鈴木:う~ん、コードである程度、あたりつけて…肉付けしていく感じかな。イントロは最後かもしれない。

松隈:イントロは最後!リズムはいつ頃確定するんですか。ドラムとか、ビートは。

鈴木:リズムはね、割と早い。まずコードつくって、リズムつくって、で、ベース入れてみたいな。

松隈さんはサビからでしたっけ?

松隈:そう、ぼくも一番最初にリズム考えて、コード考えてから、サビの一番最後の…エンディング?からやることが多い。エンディングがイントロと一緒だったりすることが多いやん。だから3サビの最後からイントロに抜けるあの感じから作りたいんですよね。決めフレーズから。

一番耳につくというか、盛り上がるところからということですね

松隈:そこが一番、ハイライトやん、曲の。そしてもう一回イントロがジャンってきたときに、おお~!ってなる。それができれば、まぁイントロができたも同然やから。だから、イントロっていう感覚じゃなくて、3サビ後っていう。3サビ後から始まるイメージが多いね。

鈴木:最初にイントロつくっちゃうと、そこに繋がらなかったりするんだよね。

松隈:そうそう、繋がりが!

鈴木:イントロ戻れねぇみたいな。笑

松隈:戻れない。笑 そうなんですよね。人の曲ならサビの最後、メロディが決まってるから、最後のメロディの流れから、こんな感じがきたらカッコイイな!みたいなイメージかな。ストリングスがぶわぁーなのか、ギターのリフがきたら良いのか。

鈴木:うん。

松隈:若い人の曲とか聞いても、なんかイントロとアウトロをわざわざdemoで違くしとる人がおるんやけど、せっかく一回しか聞かれないんだったら、二回聞かせた方が…笑と思うんですよね。

鈴木:印象に残るよね。

松隈:そう。で、イントロ良いじゃんって。、せっかくイントロ良かったけど忘れられて終わるより、もう一回きたら、おぉ~良いねって。

ポップスだったら特にそうですよね。繰り返す形。

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100点だと思っているのは、意外と自分だけ

松隈:ちょっと話変わりますけど、Daichiさんってアレンジ1曲何分ぐらいでつくられますか?どこまでやるかっていうのもあるでしょうけど。

鈴木:う~ん。たぶん平均すると、ワンコーラスぐらいだと、たぶん4時間とか。で、ざっとつくって、聞いてもらってみたいな。

松隈:ワンコーラスできたら、後はけっこう速いですか?

鈴木:そうだね。まぁ一番大変なのはやっぱ同じアーティストで、同じような曲がくるのはけっこう…笑 またこの曲、みたいな。同じネタは使えないし。そのときは時間かかるけど。

松隈:コードとかも似ちゃってるんですよね。

鈴木:そうそうそう。またこれか~みたいな。で、アレンジも似てるって言われるでしょ?笑 似てるよね、こないだのと~とか言って…俺もそう思うよ~って。笑

そういう時は何かモチーフ見つけて変えるんですか?

鈴木:うん、違うアプローチで。でも一つのアーティスト長くやってると、けっこうあるよねそういうの。アルバム3枚ぐらいで、さすがにちょっと。笑

松隈:そうですよね~確かに。

鈴木:コンセプトでも変えない限り。

松隈:エアロスミスみたいな人でも、いきなりインドっぽくなったりしましたもんね。笑 U2でも、がっつりデジタルを取り入れたり。

ものづくりに共通するものなんでしょうね。

鈴木:そうだね、まぁ自分の中でこうきたらこういきたいみたいなのって、パターンそんなに多くないじゃん。そうすると、必然的に次の曲も、こうきたらこういきたいからそうなっちゃうよね。笑

松隈:作家とアレンジャーの波長が合いすぎたらもう全部同じになっちゃいますよね。笑 こういうボールがきたらこっち、みたいな。良いんだか悪いんだか。

ボールになるけど、全部同じところに投げちゃうみたいな。

鈴木:たぶん自分の中との折り合いだけど、こうきてこういったのは前やったから、じゃあ別の、となるんだけど、これを妥協したものじゃ良くないわけじゃない。だから…多分こっちが最高だと自分の中では思ってるんだけど、こっちが100点だとしたら、90~95点ぐらいの、もう一個ないかなみたいな。

変化球的な。

鈴木:そうそう。そのせめぎ合いみたいな。

松隈:これ、いい話ですよ! 若い作家たちのそういう悩みをけっこう聞くんですけど、たぶん、越えようとしちゃって、越えられないってなって、挫折する。この辺狙えば良いんじゃない、95ぐらい。笑 やっぱ最初に自分がカッコいいって思って作ったものは、一番良いに決まっとるからね。

鈴木:そうそう。笑 でもね、そんなのすごいくだらなくて、お前だけだよって話なの。そこをこだわっているというか、100点だと思っているのは、意外と自分だけで。外の他の人から見たら大した問題じゃないんだよね。自分の中での折り合いもつけて、基本的には、ここは自己満足の世界だっていう解釈をしながらやっていく。

主観的な視点だけで判断しないほうがよいということですね。

鈴木:この仕事ってやっぱね、ある程度客観性が持てるかどうかだと思うから。どう見られるかとかも客観性がないと、わかんないでしょ。だからあんまり主観すぎると…できる人とできない人がいるのかもしれないけど、遊び心を持つのが大事なんだろうね。

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第4回【音楽シーン編】につづく

鈴木Daichi秀行

埼玉県出身。作編曲家プロデューサー

バンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かして活動中。自身の活動拠点「StudioCubic」から時代に合わせたより明確なサウンドを表現し続けている。

YUI / 絢香 / miwa / ダイスケ / LiSA / 家入レオ / AAA / 広瀬香美 / いきものがかり / 平井堅 / mihimaruGT / ゆず / JUN SKY WALKER(S)  K.   SMAP  少年隊  News  山下智久  SexyZone  HEY SAY JUMP モーニング娘。 松浦亜弥  ℃-ute  Berryz工房 SUPER☆GiRLS  AKB48  ももいろクローバーZ 平野綾 etc.

松隈ケンタ 

福岡県出身。作編曲家プロデューサー

ロックバンドBuzz72+を率いて上京、2005年avextraxよりデビュー。CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表。

バンドの休止後に作家として楽曲提供を始める。2011年、音楽クリエイターチーム「SCRAMBLES」を結成。

柴咲コウ/中川翔子/BiSサウンドプロデュース etc.

THE対談#002「鈴木Daichi秀行 × 松隈ケンタ」3/4

編集・インタビュー /平シンジ 

編集長コラム「平シンジの音バカ」はこちらから!

 

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