【THE対談#002】
音楽クリエイターとしてJ-POPシーンを牽引し続け、日本にいる限り手がけた音が耳に入らないのが難しいほど多くの人気作品を生み出している「鈴木Daichi秀行」氏と新気鋭のクリエイター集団SCRAMBLES代表である「松隈ケンタ」の直接対談!
音楽シーンの第一線を行く2人が語る、制作秘話や音楽シーンへの熱い想いから見える、時代を生き抜く“クリエイターの形”とは!?
第4回【音楽シーン編】
今の音楽シーンについてお伺いします。以前はアーティストが音楽シーンの主軸にあって、企画ものは少しバカにされるみたいなイメージがあったのですが、今はそれが逆転しているような気がしてます。その状況を実際に通ってきて経験されてきた方としては、作業している側で何か変化はありましたか?
鈴木:作業的にはあんまり変わらないかな。状況としては、なるべくしてなっていることだとは思う。個人的にはアーティストものを聞いて、カッコいいなと思って音楽始めたから、そういうアーティストものっていうのは、大事にしていきたいなと思っていて。でもそれが、ビジネス的にどうかっていうのは、すごく難しいところだと思ってる。だから、基本的には好きなものやったら良いんじゃないっていう。それこそ、なんか…アーティストが200万枚売れましたみたいな、ことではなくて。好きな人が、その人たちを支えていくみたいな流れっていうのは絶対つくれるから。現時点でもライブハウスとかでずーっとやり続けて、お客さんもいて、でもデビューしてない人はいっぱいいるし。それはそれで成り立ってるから、それを大きなビジネスにしなくても、ちゃんとその中で回っていれば、アーティストもご飯食えるし、ファンも曲を聞ける。そこで僕とかは、こういうスタジオで音も作れるよって教えて協力してあげる。なんか、そのくらいの規模でやればいくらでもできるし、自然発生的にその中のスターが出てくると思うのね。だから、そういうのを一からつくれば別にそれも良いと思うし。
無理に既存のシステムにこだわらずに、自然体で進むべきだということですね。
鈴木:そう。だからアイドルだとか、アニメだとか、色んなもの飽和しているけど、ビジネスとして成り立っているものって、それにお金を出したり、商品として買う人が一番近いところにあるだけってことなんだと思うよ。昔なんかは特に、テレビとカラオケが凄かったっていうのもあるし。本当は音楽性がどうこうで聞いていた訳じゃないと思うの、昔は。笑
テレビで言っているから、みたいな。
鈴木:うんうん。テレビに出てて有名だからとか新しい曲知らないと、置いてかれちゃうからとか。カラオケで歌えないと困る、バカにされるとか。そういう、ファッション性もあって、みんなCD買ってたみたいなこともあると思うから。なんか不自然だよね。笑
松隈:今の方が健全かもですね。
アイドルとロックバンドを同じチャートに入れることが変じゃない?
鈴木:今は全部が一緒になっちゃってて、その一緒のモノサシで考えようとしているから、おかしなことになるんだよね。AKBがこんだけ売れました~みたいなところと、でもこっちはこんだけ売れてませんみたいなところで。それこそ握手券で売れてるとか、別にそもそも全部が同じ土俵でなくてよくて。
松隈:ものさしがCD1枚で1点になってるのが変なんじゃないですかね。CDが点数になってるから。音楽的な頭で考えれば、ライブの動員ランキングもあってもいいですよね。
鈴木:うん、そうそうそう。
松隈:年間動員ランキングとか、外国にはあった気がする。U2が一位でガガが二位だとかいってた。グッズランキングとかあってもいいんやない?Tシャツランキング!笑
商品別でランキング!面白いですね!
松隈:アイドルとロックバンドを同じチャートに入れることが変じゃない? そもそもがお互い競ってないし。笑
鈴木:まぁ今のね、その枠の中でビジネスとして展開して、成功してるっていうだけの話で。だからといって普通の音楽が、もう評価されないものになったわけでもないし。だけど、どんどんね、その自分が好きなモノの情報を自分で集められるようになってきているから。そういう意味では良くなる感じはするよね。
何も考えないでできるのはバンド系
松隈:(仕事に関しての)マイブームはありますか? このジャンルやるのが好きとかあるんですか。アイドル系好きだなとか、ロック系やりたいなとか。
鈴木:そんなにないけどなぁ。笑 基本バンド系が好きだから、何も考えないでできるのはバンド系。ダンスもので打ち込みものとかは、そんなに自分からはやらないけど、つくってみたら面白いなっていう。
やっぱりバンドがベースにあるんですね。
鈴木:うん、やっぱりバンドサウンド的なのは好きだね。普遍的で古くならないんだよね。打ち込みものってどうしてもその時ブームがあるから、何となく…10年後聞いたら、あぁ恥ずかしいっていう。笑 でもバンドものってね、割と10年前くらいの聞いても変わらなかったり。そういう意味では普遍的だから、残るとも思うし。
編曲がメインかと思いますが作曲はされるんですか?
鈴木:作曲は、そんなにしないかな。頼まれてつくるとか。でもやるときはプロデュースとかでアーティストと一緒にが多いかな。シンガーソングライターの子と一緒にとか。
松隈:アレンジの方が好きなんですか。作曲をやろうっていうところには、いかないんですか。
鈴木:うーん、なんか最後の仕上げが好きなのかもしれない。やるなら最後までみたいかなっていう気がする。
松隈:あ~それわかるなぁ、作曲だけの仕事は、正直やった気にならない。
鈴木:そう。後は、物理的に時間がないとか、やっぱ何かをこう決めないと、とっ散らかるでしょ、やることが。だから曲も時間あったらつくるけど、頼まれるのがアレンジが多いんだよね。でも今の状況はいい方向だと思ってて、サウンドプロデュースとか、アーティストものをやるときに、そういう仕事の方が自分のスキルとして、その先に使えるかなっていう。
遊び心を忘れないこと。そうすれば自ずと面白いものが生まれる
最後に、これから作曲家などクリエイターを目指す方にアドバイスをいただけますか?
鈴木:コンペで決めようと思うと、「9割の人が好きといってくれるもの」を作ろうとするじゃない。でも実は「8割嫌いで2割好きな人がいるかもしれないもの」のほうが面白かったりする。作家を目指す人ってポップなものが好きなはずだから、極端に変わったものを作るつもりでも、ちゃんといいメロディーがあったりするんだよね。だから、誰がこんなの聴くんだよ!ぐらいのつもりでやったほうが、意外と面白いものができるかも。
松隈:元々ポップス要素はあるはずだから心配するなと。
鈴木:同じものをつくってもつまんないし。自分が曲を選ぶ側になることもあるけど、気になるのって、変なのだもん。おぉ、こうきたか!みたいな。そうすると名前覚えるからね。
松隈:その時ダメでも、ディレクターさんが覚えてたりすると次に繋がるし。
鈴木:コンペに決まって世に出たとしてもそうだと思う。「9割の人が好きなもの」が出ても、意外と覚えてもらえなくて、なんかいい感じだよねぐらいで収まっちゃう。そういう意味でちょっと外れたものが残りやすいと思う。この人だれなんだろう?って調べてもらえたり。これからの作家はより大事になっていくんじゃないかな。もういろんなものが出尽くしてテンプレート化されてるから、真似して同じようなコード進行で、ってやるとそれっぽくなるでしょ。アニソン風な曲をつくるのは誰でもできるからそこからどう外れていくのかってことがポイントになると思うよ。
周りと違うものをつくるべき、ということですね。
鈴木:うん。薄まるだけになっちゃうから。既にできてるところに入って行っても紛れちゃう。だったら、誰もいないところにポツンと立ってるほうが目立つじゃん。笑
松隈:わかった!アメリカ横断ウルトラクイズですよ!(日本テレビで全17回開催・放送された、伝説の視聴者参加型クイズ番組)○×のところで、絶対はずれだってわかってても、あえて少数意見の方にいったらテレビには映るじゃないですか。笑 もし当たりだった時の爆発力もすごいし。少ない方に行ったほうがいいってことやね!
鈴木:懐かしい。笑 そうだね。とにかく周りに埋もれないように、ってことと、遊び心を忘れないこと。そうすれば自ずと面白いものが生まれると思うし、聴く人にも楽しんでもらえると思うよ!
お2人ともお忙しい中ありがとうございました!
鈴木Daichi秀行
埼玉県出身。作編曲家プロデューサー
バンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かして活動中。自身の活動拠点「StudioCubic」から時代に合わせたより明確なサウンドを表現し続けている。
YUI / 絢香 / miwa / ダイスケ / LiSA / 家入レオ / AAA / 広瀬香美 / いきものがかり / 平井堅 / mihimaruGT / ゆず / JUN SKY WALKER(S) K. SMAP 少年隊 News 山下智久 SexyZone HEY SAY JUMP モーニング娘。 松浦亜弥 ℃-ute Berryz工房 SUPER☆GiRLS AKB48 ももいろクローバーZ 平野綾 etc.
松隈ケンタ
福岡県出身。作編曲家プロデューサー
ロックバンドBuzz72+を率いて上京、2005年avextraxよりデビュー。CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表。
バンドの休止後に作家として楽曲提供を始める。2011年、音楽クリエイターチーム「SCRAMBLES」を結成。
柴咲コウ/中川翔子/BiSサウンドプロデュース etc.
THE対談#002「鈴木Daichi秀行 × 松隈ケンタ」4/4
編集・インタビュー /平シンジ